2005 秋競馬

夏のローカル競馬も終り、秋のクラシックシーズンがいよいよそこまで迫ってきた。
秋を語る前に述べておかねばならない。

◎ノーザンファームの偉業
先ずは日本ダービーの連覇を含めて3歳クラシックレースを全て制覇し、NHKマイルC、高松宮記念とGⅠ6勝をあげた。
特筆すべきは、シーザリオは歴史に残る偉業をなしとげた。日・米両国のオークス制覇である。特に米オークスの勝ちっぷりは真に圧巻であった。同馬の圧勝やゼンノロブロイ(英インヴィテイショナルGⅠ惜敗、万人が不利がなければ勝っていたと評した。)の活躍は日本産馬の質の高さを世界に知らしめた。
社台グループの主役はノーザンファームである。

◎並はずれた企業努力
昨年の(2004年)クラシックは日本ダービー(勝馬キングカメハメハ)GⅠ1勝の春シーズンであったが、今年(2005年)は一気に全ての3歳GⅠを制覇とすさまじき飛躍となった。
如何にして偉業に辿りついたのか、そこには企業努力という4文字があった。

1)血統の管理
繁殖牝馬の購買(480頭以上を保有)に多額の資金を費やしていることが読みとれる。繁殖牝馬の差が牧場の成績に直接に現れる。ダービー郷は“サラブレッドの生産はけだし確率のごとし”と述べている。繁殖牝馬の血統面で工夫されている。先ず3世代に交配されている父系が3種とも異なっている良質繁殖牝馬を国内外から集めている。名馬が生れる要因は交配による畸形因子の除外と戻し交配度の高い配合。それらに正常なオンサイクルの発情に交配する。
以上が名馬の血統背景である。

★畸形因子に関しては以前に述べてある。
ランダムに交配するならば名馬の生れる確率は極めて低くなってしまう。
ノーザンファームの栄光は繁殖牝馬480頭が大きな要因を支えている。
サラブレッド生産の歴史は真に畸形との戦いである。ランダムに交配したならばメンデリズムによれば75%は何らかの畸形因子を持って生れている。遺伝とは無情なものである。 サラブレッドの生産から切り離せない近親交配である。つまり近親交配の歴史でもある。集団動物を人々が手がけると全てサラブレッドがモデルになっている。
私のサラブレッド0理論は牛・犬・羊など交配に引用されている。
同父系交配・近親交配を2年以上連続すると畸形因子を遺伝して生れてくる。
近年20世紀後半の巨星 Northern Dancer の出現により現在の90%の繁殖牝馬の血の中に潜入してしまった。連続交配が許される繁殖牝馬は、その保有する Northern Dancer が0または0.125以下でなければならない。(シーザリオはこれに該当する。)
ダービー郷やテシオが空胎繁殖に交配して名馬を得ていたことがうなづける。
以前にも述べたテシオの名言であるが“近親交配を重ねると自然は人間の過ちに対し畸形という形も以って人間に報復する”真にサラブレッドはそういう動物である。
一見外目には正常な産駒に見えても実は内面は畸形である。特に多いのが脳の障害を持っている。次に内臓面の畸形である。
白痴や脳障害では競馬はとても無理である。75%のサラブレッドは大なり小なり障害を持って生れてる。
活躍しているサラブレッドは難を除れた幸運な運命の下に生れたのである。

2)飼料の管理
2005年ノーザンファームが大きく水を開けてしまったか。
そこには仔馬の成長に最も関係を有する飼料の管理がある。それがノーザンファーム秘策である。といわざるを得ない。
サラブレッドは種付けから生れた仔馬が競馬に出走するまでに与えられた時間(期間)は大同小異でる。
その限られた時間内に仔馬はもちろんのこと繁殖牝馬への飼養も重要である。
交配以前に高たんぱくを与え密度の濃い卵子を排卵させる。生れた仔への授乳も乳の質が高い。これらは胎仔・仔馬の発育を大きく促進させる。
私は1970年代木村政司氏(故人)とともに米国に渡り、血統・飼養に関する勉強をさせられた。
牧草の輸入第1号はその際に買い付けた。たんぱく質13%のハイプロテインオーツ、スティームドオーツなど様々なオーツ、サプリメントVi-Pro-Min(デコポン社)、ヘイペレットといった商品を輸入、販売していた。
後にVi-Pro-MinからKA-HI(カーフマン社)と変えたが、その商品は現在大手の飼料会社が輸入販売している。
私が売っていた頃より遙かに多い流通量になっている。
さて、KA-HIやVi-Pro-Minにはローマテリアルとして白身の魚の粉末が使われている。それがこの飼料の成長を促進させる役目を果たしている。
魚には未知成長因子(Unknown’s Factor)があることは大昔から知られている。
先ず、我国の国技として江戸時代からの歴史を有するスポーツ、相撲の世界では伝統的にチャンコが食事の主役となっている。
新弟子として入門した力士の卵が1年もすれば体は一段と大きくなり力士としての体になってくる。その成長の早さは真に魚の持つ魔力である。究極の成長因子とは魚がもたらすコラーゲンである。
他の陸上競技、レスリング、水泳などでは魚はもちろんの事チキンが多く食されている。 チキンには多量のコラーゲンが含まれており体作りに一役かっている。
大手の飼料会社では秋刀魚の鱗から抽出したコラーゲンが売られているという情報も入ってきた。さて、それらの販売先は!!
私は昭和47年~昭和55年(1972~1980)まで明和牧場の血統面、飼養面のコンサルタントとして智恵を提供した。
そこで使用した飼料は私が輸入していたVi-Pro-Min(後にKA-HI)ハイプロテインオーツ、アルファルファヘイなどである。
1頭1頭別々にフィーディングの計画をたてたカルテを運動量、遺伝差(質料遺伝)により作成して厩舎長に渡していた。
当時、シンボリ牧場、東洋牧場、東牧場、タケミファーム、タイヘイ牧場などのランキングブリーダーへも調教師などの仲介もあり販売した。特にシンボリ牧場の和田共弘氏(先代)には繁殖牝馬の購入や種付けなどのアドバイスもしていた。
以上のデータから飼養が重要である、ということが理解できたであろう。
ノーザンファームには(秘)の飼養法があるのであろう。
1年間にこれだけの差となった成長度には何もない訳はない。
つまり、決まった期間をお茶漬けで育てるか、ステーキで育てるかである。
先日(7月11日、12日)の2日間、日本競走馬協会のセレクトセール(社台のセリ)に行った。
その名簿には5月に撮影された写真集が掲載されている。当日は撮影されてから2ヶ月余りが経過しており、セリの段上に現れる実馬と写真を見比べながらセリを見る事ができた。そこには2ヶ月間に如何に成長しているかがよく解る仕掛けになっていた。
ノーザンファームの仔馬の成長は他のブリーダーの生産馬と比べて成長の差が歴然としている。このまま2年・3年と時間が経過した姿が2005年であった。
成長が早い事はサラブレッドにとって大きな武器である。
ポテンシャル80%のサラブレッドが100%の早さで成長した場合、80の力で戦える。逆に100%のポテンシャルであっても成長度が80%であった場合同じ様な能力であろう。
春シーズンは成長が早い完成度が高い馬が優位である事は明白である。

秋のクラシックシーズンの展望

◎3歳クラシック

秋になると毎年のように春競馬には間に合わなかった馬たちの中から成長の遅れを取り戻した馬が台頭してくるシーズンでもある。
先ず、ディープインパクトの三冠なるかである。同馬は7月4日に栗東を発ってノーザンファームに放牧に帰った。
その後札幌競馬場で調整され、ファンの前でデモンストレーション的に公開調教のサービスもあった。9月12日に栗東へ戻るとの報道がなされた。同馬は71日間北海道に居たことになる。
そこで発生する磁場の問題である。71日といえば10週と1日間磁場の全く異なった北海道に居た、初めの7週間は栗東磁場の支配下である。その後の3週間と1日は北海道の磁場の支配下に漬けられている。栗東の磁場の支配下に戻るには栗東に着いてから北海道磁場の順応期に入って23日経過しているため、それと同じ期間栗東に居て待たねばならない。その間の競馬は脳の視交差上核が働かない。そのために凡走してしまう。
10月6日まで時間が経過しないかぎり栗東の磁場が助けない。
今年度の神戸新聞杯は9月25日、菊花賞は10月23日に行われる。
1999年の京都記念に社台ファームで夏の休養を取っていたスペシャルウィークとステイゴールドは京都記念に共に駒をすすめた。
両馬は大凡走であった。ステイゴールドが6着、スペシャルウィークは7着に終わった。
その後天皇賞(秋)に出走したが、この2頭は最早終わったと判断されたのか全く人気はなかった。当時は出走するレースの1ヶ月以上前に入厩しなければならなかった。
そのため次走の天皇賞では完全に栗東の磁場の支配下に戻っていた。結果は2頭の1着2着で決着した。(万馬券・馬連)
過去に春に2冠を制し三冠馬となった関西馬は2頭います。それはシンザン、ナリタブライアンの2頭です。他は秋を失敗している。
2頭の三冠馬は共に関西地区で夏を過ごしている。
夏北海道ですごした馬に三冠馬はない。
ディープインパクトの三冠は赤信号ということになるが、13日の差で吉と出るか。
遅れていた成長が秋になって間に合った。
これからのトライアル(神戸新聞杯、セントライト記念)は目が離せない。
古馬三冠に関しては英国のインヴィティショナルS GⅠに2着と惜敗した後に秋は2004年と同じスケジュールと藤沢師に公表した。
同師は磁場に関しては理解されているため外国遠征はレースは1戦で直ぐに帰国している。

只、サンデーサイレンス産駒は古馬になると牝馬との闘争を避ける習性がある。
デュランデルはGⅠを3勝しているが、負かした馬は全て牝馬である。又、ゼンノロブロイの天皇賞は先頭にいた調教パートナーのダンスインザムードを抜いて勝っている。
男は女には、良い格好をしたいのか。
JCはサンデーサイレンス産駒は3頭と少なく、他の2頭は終如最方でロブロイの視界にはなかった。そのうえ先頭に立つのが早くて潜在能力で押し切った。
有馬記念の場合はタップダンスシチー1頭を目標にして走っていた。タップダンスシチーの逃げ足が鈍った。同馬は仏国から帰って強行スケジュールのため疲れが取れていなかった。それが幸いして秋の古馬三冠を制した。さて、名師藤沢氏は如何なる秘策を示すか楽しみである。

◎牝馬のGⅠ

春の覇者ラインクラフト、シーザリオ(共にGⅠ2勝をあげ、他の牝馬が付け入る隙間もなかった。後者は故障により出走は不可能である。)。
ラインクラフトはマイラータイプで秋華賞に出走は未定。
秋華賞は毎年オーナーブリーダーの牝馬が勝利する傾向がある。1着ばかりか2着までもである。(生産者がオーナー)
一般の馬主の持ち馬が勝ったことは、第1回から1度もない。
秋華賞以前の3歳GⅠであったⅠ・女王杯、それ以前のヴィクトリア・カップの第1回から続いている傾向である。

エリザベス女王杯スィープトウショウ(オーナーブリーダー)が有力だ。同馬は春に宝塚記念を勝った古馬最強。
スプリンターズS・マイルチャンピオン。
昨年3着ホンコンのケープオブグッドホープとシーズトウショウなどが活躍。
安田記念のアサクラエデン、ラインクラフト、デュランデルらは秋も健在だ。
春の天皇賞の様に程度の低い競馬は見たくない。顔ぶれだけGⅠ・GⅡの勝ち馬は揃えてあったが、勝ち馬はハンデのオープン大阪、ハンブルカップ3着のスズカマンボ(朝日CC GⅢ)が1年前に勝っただけで、1年以上勝鞍がない平凡な馬だ。2着のビッグゴールド・3着のアイポッパー、4着のトウショウナイトまでの入着馬はGレースのGの字も勝っていない。GⅠ・GⅡの勝ち馬は全く走れない。
私は競馬暦50年になるが、最も恥かしい天皇賞を見せてもらった。天皇賞の伝統に汚点を残した。
秋のGⅠシリーズが始まるが、内容豊かな競馬のプロデュースを望みたい。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitter で

コメントを残す