続  カナメ物語  09

三橋せんせ こんにちは。
ひげのおっちゃんも こんにちは。
おっ カナメ 元気にしてたか?
わてから 元気とったら 何も残らんわ。
そうかそうか よしよし。
カナメくん 元気そうで 何より おやつ食べたら 馬場行っておいで。あと こちらが 君の担当をする 草尾太郎騎手だ。
よろしくね カナメくん。
ん? あれ? りんご屋はんは?
豊くんは 今頃 必死に練習してるよ。彼は障害経験がないからね 一緒に練習できるのは 夏の終わりくらいかな。
なんや がっかりやな。
あの カナメくん これ お土産の リンゴ。岩木産。
えっ! 何や いい奴やないの よろしゅうに。
(前日) 
豊さん 明後日 中山に行って カナメの調教してきますけど 何か 気を付ける事ありますか?
ん〜 まずは 第一印象が大事だから お土産のリンゴ しかも 青森県弘前市 岩木山で採れた リンゴを持って行くといいよ。
そんな こだわりがあるんですか?
あるよ ヘソ曲げると 乗せてくれないよ。
それは 大変ですね 用意しなくっちゃ。
乗った瞬間 電気が走るって言うのかな ディープに乗ったときと同じ感じを受けるよ。
ディープには 乗った事ありませんけど…… 
あっ そうだったね とにかく この馬は 違うって 思えるんだ。
そうですか 楽しみです。

よかった 聞いといて とりあえず ご機嫌みたいだ。
カナメくん 今日は スクーリングを兼ねて 散歩に行くよ。
はいな むしゃむしゃ。
あとで食べるから 1個持っといてな。
中山は キレイだな。知ってる?カナメくん 僕は 大障害で3着に入った事あるんだよ。
なんや 3着って 1着しか 知らんわ。そんなん自慢しとるから 一流になれへんのやないの?
ごめん そうだね。君の言うとおりだ。もっと頑張らないとだね。
ほら これが 水郷障害だよ。
知っとるわい。 わては これを跳ぶために オーストラリア(本当は種子島)から帰って来たんや。
次 行くよ。 
こらこら 待てや。全部 歩いて行く気やないやろな?
そうだよ 散歩だし … 
わてな ちまちま したのは 好きやないんや 乗れや。
えっ! いいの?
えぇって 早よ 乗れ タロ〜。
乗った 瞬間 ホントに電気が走った。これか! 豊さんが言ってたのは。何て 柔らかい背中 何だ。感動する。
ほな 行くでぇ。ピュー。
待って待って 跳んじゃダメだからね 今日は 見るだけ。
けっ つまらんの。
一周して 再び 水郷障害へ。パチッ!やる気スイッチが入った。 いきなり加速して そして 跳んだ。 
ひぇ〜 凄い 空を飛んでるみたいだ。着地も柔らかい。凄い。
ふぅ。 タロ〜 おやつ。
持ってきた リンゴを食べ終わると いつまで乗っとんのじゃ 早よ 降りろ。振り落とした。
帰るど。そういうと とっとと走って帰った。
ただいま〜 おっちゃん シャワーしてや。
あれ? 太郎くんは?
トロいから おいてきた。
必死な顔して 帰ってきた 太郎。
ゼィゼィ……先生〜。カナメ カナメくんは?
シャワーしてますよ。あの子 頭良いから 勝手に行って 勝手に帰ってきます。たまに コンビニ寄ったりしますけどね。
あ〜よかった。
わがままな子ですけど 宜しくお願いします。
こちらこそです。カナメくんなら 大障害取れれると思います。
うんうん 先生は 目を細めた。

ほらっ 右脚 上げて 次 左。
なぁ ひげじい。
誰がひげじいだ。
お尻がな 痒い。
何だ 蚊にでも 刺されたか? どれどれ?
ブッ! 
くっさ〜。 やりやかったな ゆるせん。 ブッ! 手で掴むか それをカナメの鼻に押し付けた。握りっ屁。
く 臭いがな。おえ〜。
いいか カナメ 悪い事したら これを喰わせるからな。
そういうと 握りこぶしを鼓舞し 振り回す。
わかったがな もう せんて。ほんま死ぬとこやったわ。何喰うとんねん。
ん? 酒。

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