続  カナメ物語  07

カナメくん お疲れ様。
やっぱ君は、本気で走ると凄いね。
「ん? こんなんホンキで走るかいな 流しただけや」
あらま …… 。
「なぁ りんご屋はん わてな こんな つまらんとこ 走りとうないねん」
え〜! じゃ 何したいの?
「水郷障害 跳んだ事ある?」
うん とりあえず 障害の免許も持ってるから あるよ。
「おっ! なら話しは早いやん。 そんじゃ 一緒に跳ぼやないか」 
いやいや そんな 簡単に跳べないよ。僕は障害レース 出た事ないんだよ。
「んじゃ 出来へんの? 噂では超一流って 聞いたけど ウソやったんか」 
一流か どうかは わからないけど レースで跳んだ事は ないね。
「あんさん ずっと前に やれば出来る子 って言うてはったやん 出来ん子なんやね ホンマがっかりやわ」 
ん〜 カナメくん ここだけの話だけどね ホントは 障害レースに出て G1を勝ってみたい。クマちゃんって言う騎手が 平地と障害のG1レースを取ってるんだよね。
「なら 出よや ないかい わてな 障害に出たいねん。水郷障害を跳ぶときな 水面に自分が映りよるし 水面を走る風が えろう気持ちええねん」
テキ(調教師)は 知ってるの? 走りたいって事?
「あぁ知ってはるで 真ん中にな 練習場作ってるんや」
え〜。じゃ 聞いてみるね。

ヨシ先生 カナメくん 障害レースに出るんですか?
ん〜 それが JRAでの出走条件が障害なら OK って 言われてるんです。ほら この前の……。
あっ 誘導馬 疾走事件ですね。
ホント 困った子で。大井には 障害コースがないから 頭を下げて 造ってもらってるとこです。
この前 カナメと話しをしましたら
 自分の夢を語りましてね。種牡馬になって 奥さんと子供たちと オーストラリアで余生を送りたいって 普段は フザケてばかりいる カナメが真面目に…。
じゃ ホンキなのですね。わかりました。
あっ でも 大井とか 地方で走るときは お願いしたいと思います。あの子は豊さんしゃないと 拒否しますんで。
はい 宜しくお願いします。

もしもし 潤兄ちゃん。
なんや 豊 珍しいな。
兄ちゃん 僕に 障害を教えてもらえないだろうか?
はっ? 何言ってるや 乗る馬(平地)は いっぱい おるやろ。
いるけど 僕も そろそろ 歳だから 引退も近いでしょ。
そやな。それで?
クマちゃんみたいに 両方のG1タイトルを取りたいなって 思ってさ。
アホ抜かせ。まわりから 猛反対されるやろ 量子はん も 心配するやろし。
大丈夫、妻は 昨夜 ベッドで 納得させました。
ベッドで? 忙しいやっちゃの。昼間は馬に 夜は妻に乗る。
あは 乗ってませんよ。乗られ……。
はいはい 仲良き事で。
乗りたい馬がおるんか?
はい。
あっ! もしかしてカナメか!
はい。 来月試験を受けて 夏の終わりに出走予定です。
そして あれか? 中山か?
はい 大障害です。
大丈夫か? 
覚悟は出来てます。
土曜日に 大障害(カナメ)勝って 日曜日に有馬(ぼーちゃん)を勝つのが夢です。土日 兄弟馬で制覇する事。 
途方もない夢やな。羨ましい。……カナメ おくれ。
ダメです。約束したんですカナメくんと。
ケチやな。…… わかった。明日から 特訓だ。
ありがとうございます。障害ナンバー1騎手 宝 潤 に教えてもらえれば最高です。
アホ なんも 出んよ。 

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