もしもし 三橋先生 あの〜 大変申し上げにくいのですが…カナメがひょこり帰って来ました。
え〜 足は？
ちゃんと付いてます。オーストラリアに泳いで渡ったって、 ウソ付いてます。
ホント じゃ カナメ君だ 間違いない。 で 元気なの？
はい かなり 馬体重は増えてますけど 相変わらず 良く しゃべります。
あはは そうですか。無事で何よりです。でも あれですね、引退届けも出したし 復帰は 無理でしょうね。
ですよね。 そのへん どうしようか悩んでます。いっそ 熊本の牧場に送ろうかとも。
熊本〜 馬刺しですか？
それくらい 大きくなってます。
とりあえず 連れて来て下さい。それから考えましょう。
カナメ 運転の邪魔だよ。 後ろ行けよデブ。
デブは ないやろ。昔 エロ本やったろ。
あぁ あの本な ヨダレがくっついてて 読めなかったよ。馬が エロ本 読んで 何してたんだ？
妄想の世界をな 一生懸命泳いどった。
はぁ〜。アホらし。
あんちゃん サービスエリアで 団子買うてな。
はいよ。お金は？
出世払いや。
もう 出世しないだろ？
何でや ちょいと競争して勝ったら お金貰えるやないかい。
もう カナメは 走れないの。
何でや。
引退したから。
引退って何や？
もう 走らなくて 良い事や。
へぇ～ 競争せんでもええんかい？
そうだよ。
やっほ〜 ラッキー。
何が ラッキーなんだ？ 競争馬の末路を知ってるのか？
北海道に帰れるんとちゃうの？
違うな。活躍すれば 種牡馬。乗馬や余生をおくれる牧場 または 食用馬かライオンのエサだ。
じゃ、わては 活躍したから 種牡馬がいいな 酒池肉林やろ 聞いた事あるわ。
種牡馬はね Ｇ1とかで 活躍した馬だけに許される仕事。カナメの場合は 良くて 乗馬倶楽部、悪くて 熊本だよ。
クマモト？
そう 食用の牧場があるんだよ。ばんばん喰わせて 太らせてから バシッ。
バシッ って何や？
クビ ちょん切る音だよ。
ひぇ～ そんなんいやや、断固反対する。
なら ちゃんと 先生と馬主さんに謝罪した方がいいと思うよ。
うん そうする。
（2年前に戻る）
中山で勝った後（新カナメ物語） 小倉に遠征したカナメ。
小倉競馬場で ゴロゴロしていたら 鼻の高い騎手に 声を掛けられた。
youは 何をしているんだい？
イモムシゴロゴロごっこだよ
ゴロゴロ ゴロゴロ。
練習は？
そんなもんしないよ 腹減るだけだし。
あはは youは面白いね。
ここの競馬場は きれいだね。私の国の競馬場に似てる。
へぇ～ どこの？
オーストラリアさ。
知らないな？。
ここから もっと南の方さ 海の向こうだよ。今は まだ 冬で寒いんだ。
へぇ～ わては 北海道生まれだから 寒いのは 平気やけど 暑いのは 苦手やな。
ふ〜ん じゃ一度 おいでよ。良いとこだよ。
あんちゃん 名前は？
ワタシは ブーマン。youは？
わては カナメちゃんやで よろしゅうな。
カナメは特別戦を圧勝。ブーマンも小倉大賞典を勝った。
ミスターカナメ じゃ またね。オーストラリアに帰るよ。
グッバ〜イ。
あれ？ カナメ 見なかったですか？
知らないよ。
誰に聞いても 知らない。カナメは 小倉競馬場から 忽然と姿を消した。
その頃 国道3号線 山道を走り抜け 桜島の噴煙を横目に そして 最南端に辿り着いた。
この海の向こうに オーストラリアがあるんだ。 泳ぎは プールで練習したし たぶん大丈夫やろ それっ ザブーン。 カナメは オーストラリアに向かって泳ぎ始めた。
ふぅ 流石に疲れたのぉ 流木につかまり そして 寝てしまった。
白馬の娘と追い掛けっこをする。
待て待て〜 きゃはは。
うちの娘に手を出すな～ビックリして 目覚めると 海岸に流れ着いていた。
やったぁ オーストラリアに着いたぁ。そこへ 散歩中の外国人のおばあちゃんに会う。
あれ？ お馬さん どうしたの？
泳ぎ疲れて 腹減った。
まぁ じゃ うちにおいでよ。と家に招待され 採れたて野菜をご馳走になった。
彼女は ここの島に惚れ込んで 移住してしまったアメリカ人であった。
島の外れで 野菜を作り 絵を描いて生活していた。たまに 町に出て 買い物するが ほとんど この地に一人でいた。そこへ 流れ着いた カナメ。
ばぁちゃん 寒いって聞いてたのに ぜんぜん寒くない むしろ 熱い。
そうね 今年は 暑いわね。異常気象かしらね。
ほうか ここも 異常気象か。どこもいっしょやな。
こんにちは オーズリアさん 郵便です。
は〜い 遠くまでご苦労さま。
やっぱオーストラリアだ。へぇ〜 オーストラリアにも 郵便配達あるんやね。しかも 赤いバイクで〒マークまで一緒やて。凄いな。
そう カナメが流れ着いたのは オーストラリアではなく 種子島であった。
日本の本土では 競争馬行方不明と新聞の１面の端っこで扱うが 音沙汰なし。最後に目撃されたのは 鹿児島市内。暑いので 日中は 日陰に隠れ 夜な夜な移動をくり返していた為 騒ぎになる事は なかった。
新聞配達員がバイクを飛ばしていると
後ろから パッカパッカと音が近付き 抜かれた えっ！今の何？ 馬？ もしかして あの馬？
小倉から ここまで来たの？ 通報するも すでに姿はなく そして 海へと消えた。運よく 海流に乗って種子島に流れ着いたのであった。
